セルフとパーツの対話の流れ その1【IFSエッセンス解説】

IFSのセッションプロセスの中で生じていることを簡単に表現すると、「その人セルフとパーツの対話」だ。セラピストは基本的にそれをサポートする人。

セルフは、当人の精神性やスピリチュアルなエネルギー。
パーツは、批判的だったり頑固だったり怠け癖だったりといった人間らしい側面。
そんな捉え方もできる。

この内面での対話は経験してみないと分からないかもなぁ、と思いつつ、どういうことなのかを表現してみたい。

例があった方が分かりやすいので、先日自分の中で生じていた葛藤を題材にしてみたい。

簡単に表現すると「福岡県内の特定の場所に引っ越すか」「その場所には引っ越さずに別の場所を探すか」「引っ越し自体をせずに現状に止まるか」ということ。

2月頃にご縁が繋がり、すぐにでも居住可能な古民家を紹介してもらった。
移住という大きな決断でもあり、すぐには心が決まらず、右往左往する。

「引っ越ししようぜ」と言っているパーツの声
これはそういう流れなんだ。
環境も良いし、いろいろな潜在的可能性も高い。
友人一家もすぐ近くに住んでいる。
コミュニティを創っていくことをしたいなら、条件が揃っているじゃないか。
などなど。

「いやぁ、どうかなぁ」と言っているパーツの声
家が広すぎるし、長く住むにはそれなりの改修も必要なんじゃないか。
子育て世代がとても少ないし、これから増える可能性が本当にあるの?
「山が付いている」って聞いてたけど、そこまで広くないし。
まだそんなに知らない土地だし、焦って決めるのもどうかなぁ。
などなど。

この二つの立場が自分の中の主なパーツだった。自分の内側で対話する際に難しさがあるとしたら、別々のパーツがそれぞれに持っている意見や主張をぶつけ合うから。
A「やっぱり、こうしようかなぁ」
B「いやいやいやいや、それはちょっとどうかな」
こんな感じで混乱や堂々巡り的な状況に陥ってしまう。

そして、「何が良いのか」ということを頭で考えて整理し、「どちらの選択の方がメリットがあるか」みたいな打算も動き始める(これ自体もパーツの働き)。

こういう場合は、なんとか自分を納得させたり、「こうしよう」と意志の力で決めたり押し通したり。ただ、どこかに「大丈夫かな」みたいな違和感が残ったままスッキリしない状態で動き始めるといったことも起きる。

こんな時にIFSでは自分の中にある声をパーツとして捉えて、そのパーツから距離を取って話を聴いていくということをする。これが、セルフとパーツの対話になる。

なぜ距離を取るかというと、往々にしてそのパーツとブレンド(一体化)しているからだ。ブレンドしていると、そのパーツのフィルターを通して世界を知覚していて、それを現実、真実としてしまう。パーツに乗っ取られている状態とも表現できる。
ものすごく怒っている時なんかは分かりやすいかな。怒りに飲み込まれて、他のことに気づけなくなる。

話を聴く主体としてのセルフという枠組みがないと、Aのパーツ、Bのパーツとコロコロと一体化する対象は変わりつつ「どっちが正しいか」の主張のし合いになる。そうなると、力の強い方や声の大きな方の主張が通ることになる。「わたし」というシステムの中は不調和、葛藤状態が続く。

自分の中にある考えや感覚、感情といったものをパーツとして捉えて、それと距離を取る。そういう意見を持っているパーツがいるんだよな、と興味を持って、そこにどういう背景や想いや願いがあるのかを聴いていく。

この距離を取るスキルは「アンブレンド(脱一体化)」と言われている。そのパーツに距離を取ってもらうことを頼んだり、「そのパーツに意識を向けた際にどんな感じがするか」を感じ取ることで、意外と簡単に距離が取れる。
パーツとアンブレンドした状態がセルフエネルギーにつながった状態でもある。

セルフは思いやりや好奇心、落ち着き、自信といった資質(セルフの8Cの資質)を持っていて、その状態から否定やダメ出し、ジャッジなしにパーツの声を聴いていくことができる。

>>続編:その2 セルフコンパッション