プロセスの中で何が生じているのか? パーツワーク&NVCセッションの解説

先日紹介した、自分の「中学生の時の「クールな自分」というパーツに共感する」にまつわるプロセス。
今回の記事は、IFS (パーツワーク)とNVCの視点から上記のプロセスを解説してみたい。
それを通して、セッションの中で何が生じているのか、どんなことをしているのかを把握してもらえるかな、と。

まずは、「パーツ」について。
パーツワークの中では、人には本来的に複数のパーツ(部分)が自分の中にいると捉える。

「人に対して批判的なわたし」「弱い立場の人に優しいわたし」「本音を言わないわたし」「人との関係が面倒臭くなるわたし」などなど。
自分の例で言えば、「身内に対して不機嫌になるわたし」。
これを「自分の本質」「自分の特性」「自分の性格」「不機嫌=自分」とは捉えない。
「不機嫌なパーツ(部分)」が自分の中にいると捉える。
そして、そのパーツには「ポジティブな意図」があり、「わたし」というシステム全体に貢献したくて何かをしている。
「不機嫌なパーツ」には、「自分が自分であることを守る」「クール/硬派というアイデンティティを守る」「外からもらったアイデンティティを守ることで、無難に過ごして生きていく」という意図があった。

「自分の中のどんなパーツにも貢献したい意図がある」という視点があれば、どんな自分の部分も歓迎できるのではないだろうか。
多くの場合、自分が気に入らないパーツに対して、「変えよう」としたり「乗り越えよう」としたり、批判や否定をしていたりする。
パーツは貢献したくて必死に働いているのに、邪険に扱われることで、より頑なになっていく。抵抗すれば、反発がやってくるのが自然の理。

パーツワークでは「どんなパーツも歓迎する」というスタンスを取る。悪いパーツ、良いパーツという捉え方はしない。
そして、「今は極端な役割を担っていても、話を丁寧に聴いてもらえてリラックスできると、より本来的な価値ある働きをする」とも言われている。
パーツは固定された性格や性質ではなく、変容し得ると捉える。
そして、その鍵がパーツの話を聴く、共感するということ。

パーツの声を聴く/共感する
自分の中にいる様々なパーツ。その中で特に気になるパーツを特定して、その声を聴いていく。
その際にとても重要なのが、セルフ(Self) から聴いていくということ。
セルフとはパーツとは違い、わたしそのもの。いろいろな宗教やスピリチュアルな世界で言われている、ハイヤーセルフ、魂、仏性(ブッダネイチャー)といった質。
セルフは誰にでも生まれながらに備わっていて、過去の経験によって歪んだり傷ついたりはしない。いつでも「今ここ」、わたしと共に在る。

セルフの状態にあると、以下の「8つのC」の質のいずれかが自分の中で感じられる。

Curiosity:興味関心を持って接する姿勢
Compassion: 慈悲のこころ。思いやり
Calm: 落ち着き。マインドフルな状態
Courage: 勇気を持って接する姿勢
Clarity: 明確さ。より深い理解
Confidence: 自信。ぶれない姿勢
Connectedness: つながり。
Creativity: 創造性。違う視点から捉える

このセルフの状態にシフトするために、パーツワークの中で魔法の質問がある。
「その気になるパーツに対して、どんな感じがするか?」というもの。
その質問を受け取った際に、上記の8つのCの質が自分の中にあれば、セルフの状態にあることを意味する。

例えば、「このパーツは、どうしてそんなに不機嫌モードになっちゃうんだろう」という好奇心や思いやりの気持ちが湧いてくる。あるいは、とても落ち着いて静かな状態で、そのパーツに向き合える感覚がある。

そうはならずに、「そんな癖とっとと手放しちゃいな」みたいな反応が出てくることもある。その場合は、反応をパーツとして捉える。そう言っているパーツが別にいるのだ。
その声は尊重しつつも、「今は、不機嫌モードの話を聴きたいから、少しスペースをくれるかな」と、そのパーツにリクエストをする。

そのプロセスを経て(時にはいくつかのパーツが出てくる)、セルフの状態からパーツの話を聴く。これをパーツワークでは「アンブレンド unblend」と表現している。
多くの場合、反応をしているパーツが「わたし」を覆っていて、「わたし=不機嫌」みたいな状態になっている。
「そのパーツに対してどんな感じがするか?」という問いを経て、そのパーツと距離を取ってセルフから話を聴くことができる。

これは体感してみないと、なかなか理解はできない気もするけれども、とても大切なポイント。
メタファーで表現すると、本質は広い青空。そこにいろいろな雲が漂っている。入道雲もあるし、雷雲もある。雲自体は変化していく。その雲を自分だとせずに、広大な青空につながり、そこから雲の話に耳を傾ける。

話を聴くプロセス自体は、流れに任せる感じがある。
パーツに「どんな役割を果たしているのか」「その仕事をしなかったら、どんな嫌なことが生じると思っているか」といったことを聴いていく。内的な世界での対話。
パーツに質問をすると、不思議といろいろなイメージや情景、声が自分の中に出てくる。

そして、そのパーツが抱えている経験や苦悩、痛みや悲しみに寄り添う。
この聴くプロセスでNVCの共感がとても役に立つ。そのパーツがどんな感情とニーズを持っているのかに意識を向けていく。

不機嫌パーツには、「クール/硬派」と外から言われて、それが「自分だ」と設定する体験があった。そして、「誰かを好きになる」みたいな感情には蓋をして、抑え込んでおく。
そこには、「それをしていないと、自分が自分じゃなくなるという怖さ」や「違う自分を出した時にそれを否定される不安」があった。
その奥には、外から言われることに囚われずに、もっと軽やかに柔軟に生きたいように生きること。そんなニーズがあった。

自分の中の不機嫌なパーツを批判したり、乗り越えようとするのではなく、その話を聴く。
そうすることで、パーツの緊張感がゆるみ、これまでとは違う働きでシステムに貢献したい感じも出てくる。

プロセス自体は内なる旅のようなもの。
細胞レベルで身体に入り込んでいる過去の経験やそこにあった感情、身体感覚、作られた信念。そういったものをセルフのエネルギーと共に共感で包み込む。
そのプロセスによって、自分というシステムがより統合され調和された状態へ向かう。

一回のプロセスで全てが変容するほど「わたし」というシステムは単純ではない印象がある。
プロセスを重ねていくことで、「自分を知る」「自分を見る」ということが、よりリアルになっていく。何より、「自分を知る」というプロセスは発見もありとても面白い。

【参考資料】
英語だけども、より詳しい資料はコチラ
デレク・スコットによるパーツワークの基本枠組みPDF

この動画も基本的なことを伝えてくれている。
Finding Your Parts (youtube)

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