ここ数年、田んぼ(無肥料&無農薬)で稲刈りをしていると、「稲魂:イナダマ」とも呼ばれる天然の麹菌がアチコチで発見できていた。
季節的なタイミングと環境条件が整うと、発生するのだと思う。
「農業」の中では「稲こうじ病」という「病気」として捉えられている。対策は農薬を振ることらしい。。。
この天然の麹菌から麹を仕込みたいな~と毎年思っていた。
そして稲刈りをしながらせっせと麹菌を採集していた。
けれども、保管状況が悪く、違うカビが生えて来たりして、これまでトライはしてこなかった。
今年は、保管するのにビニールに入れずに皿に入れて乾燥保存。
「これなら使えるな」という状態だったのでトライすることに。
やってみないと分からないことは、とりあえずやってみる。
机上の空論や「どこそこに書いてあった」というだけでは、知恵にならない。
手前麹を仕込むイベントの際に、米500グラム程度に天然麹菌をまぶしてみた。
500グラムで成功すれば、それでOKだと思っていた。
並行して8キロぐらいの麹を仕込んでいたので、その麹の発熱を利用して温度をキープ。
48時間後の結果は、ピンポイントでうっすらと麹菌が広がっているという状態。ビッシリいくかと思ったけれども、全然そうではない。
なので、その後も温度をキープして繁殖を試みた。
ここから広がってくれるかな~と思っていたが、あまり芳しくなく。
チラホラと白い麹菌がある程度で、全体には稲魂のカビというか、黒やら緑の粉っぽい要素が散らばっている。
うーむ、一応麹菌が繁殖しているので一部成功ではあるが、全体としては使える感じではない。しかも、別のものも繁殖している印象。。。
稲魂に麹菌がいることは分かった。けど、活用できないってことは失敗?
そんなことを感じつつ「どうしようかなぁ」と思っていたらひらめいた。
ぽつりぽつりと菌が広がっている部分を手選別して集める。
それを種菌として、再度麹を仕込む。つまり、天然麹菌は二段階で育てるということ。
2キロ程度でやってみると、初期の温度があまり上がらない印象もあったけれども、通常通り麹菌が広がってくれた。大成功。
見た目としては、これまで仕込んできた麹と何ら変わらない。
甘酒も美味しく醸せた。
この天然菌麹をさらに種菌にして8キロに増やして味噌にした。
というわけで、稲に着く天然麹菌から麹を育てるには2段階で仕込むと良いことが経験を通して学ぶ。
やっていく中での試行錯誤やふと浮かぶインスピレーションなど、そのプロセスが本質的に愉しい。
しかし、稲麹を初めて仕込んだ人物って、どういう感性を持っていたのだろう?
昔の人は、今の人が見えていないものもたくさん見えていたし、感じていたんだろうね。