「スキルとメタスキル」(IIT@マウイ)

マウイでの学び
実は最初の数日間は「どのクラスを取ったら自分にとって最大の学びになるか?」みたいな気持ちでいた。
そして、時間の限られた2時間ぐらいのクラスの中で「何が学べたか」ということをすごく気にしていた。
「本を読めば分かることでは?」みたいな反応が自分の中に出て来たり。何か、焦っていたのだな、と今は思う。

けれども、時間を重ねる間に「僕がココで学んでいるのは、スキルを超えた所にあるメタスキルなんだな」ということがジワジワと腑に落ちてきた。

氷山を思い描いて欲しい。
海面から出ている部分。これをスキルとしよう。
その部分をやっきになって学んでも、小手先のスキルでしかない場合がある。

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人と関わるコミュニケーション、人の痛みや傷にも触れることもあるし、人生の課題に一緒に直面することもある。
そんな時に、問われるのはスキルを超えた「在り方」「メタスキル」。氷山の見えない部分にどっしりと腰を据えていて動じない部分。実は、見えている部分よりもソチラの方がはるかに大きいし大切。

5人のトレーナーやオーガナイザー、参加メンバーと接していると、とても在り方が落ち着いていて明晰で、自分の中で生きているニーズに忠実なことが伝わってくる。近くに居て、自分の中からエネルギーが沸いてくる。そして、不思議と慈愛に満ちた気持ちも出てくる。

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(photo by Renata Mendes)

例えば、IITの期間中にいくつかの課題が持ち上がった。例えば、ホットタブ。小さな露天風呂のようなもの=湯船につかる習慣が無いので向こうでは特別なもの。ジャグジー機能がついているものもあった。
このホットタブに入る際に、水着を着用というのが前提になっていたが、「健康面や気楽さのニーズから、水着無しで入りたい」という提案が持ち上がった。
「この提案に反対意見がある人は?」と聞くと数名が挙手。そこにも色々なニーズがある。秩序だったり、裸の人が居るかどうかを気にしないで良い気楽さだったり。

いくつかのプロセスを経て、人目に触れないホットタブがあるので、そこを女性専用&水着無しでもOKという選択肢を確保することで落ち着いた。
「たかが、ホットタブ」「どうでもいいんじゃないか」的な雰囲気もあるように僕は感じたが、その中で「皆のニーズを満たしたい」あるいは「どんな事柄でもそこにあるニーズを汲み取る」という姿勢が場にはあったと思う。

全体で話し合いをする時間はかなり限られていた。そもそも講座がメインだし、伝達事項がたくさんあるから。「今の話し合いのペースで反対意見が出たら提案は保留という形でやっていたら、9日が経ってしまう。いつホットタブの件はケリがつくのか?」という懸念も上がった。それがリアルな状況だった。

そんな中で経験豊富な参加者が「Sociocracy」という意思決定の手法を夜のオプションクラスの中で紹介してくれた(夜のクラスは参加者が提供するスタイル)。
「コンセンサス」全員の合意というのは、「最善=ベスト」を確定させること。
それに対して、「コンセント」(同意)というのは、「次善=good enough」をひとまず決めること。そして、その提案をやってみる、受け入れてみる、それを生きてみる。そこで課題や修正点が出て来たら、その時に考える。

ここで大切なのは、他の人のニーズをケアしたり、起きていない問題に言及しないこと。「もし、こうなったらどうする?」という想定で話をしていくと、物事が決まらない。自分の感情とニーズにつながった状態で「自分はこの提案を試してみる、受け入れることができるか?」と自分自身の守備範囲で判断する。

全体でこの視点をシェアしたことで、ホットタブの提案は「OK、やってみよう」と受け入れられた。気が付くと、皆のニーズが満たされていた。

ここまで持っていくプロセスは時間が掛かったし、提案した人は疲弊していた感じもあった。けれども、それを周囲が支えていたり、たくさん話を聞いたりしていた。その在り方、一人ひとりを大切にする姿勢にメタスキルを感じていた。

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(photo by Renata Mendes)

こういったことを期間中に生じる突発的な事態を通して何度も感じることができた。
自分に正直になり涙ながらに弱さも含めて表現することだったり、今自分が抱えている葛藤を伝えることだったり、本当に小さな声を丁寧に扱うことだったり。

この在り方はスキルとして身に付くものではなく、醸されるもの。つながりや共感、思いやりがベースにあるIITという場自体が、それを醸していく。何とも、不思議な場の力学。それは体感しなければ、理解できないことだと思う。
IITを通してある種のメタスキルが自分の中でも醸されはじめたと思っている。一度この土台が醸されると、それはあまり揺るがず、むしろ熟成していくと思う。熟成には共感的酸素があるとなお良くなるはずだ。